明治初期、全国でも有数の漁師町である、氷見にて創業。銘柄は「曙」。初代 利右ェ門が、蔵裏の日本海から昇る美しい日の出に感動し、命名いたしました。
年間二百石の小さな酒蔵です。造り手は蔵元杜氏であり、能登杜氏の伝統を受け継いだ製法で、熱意だけは負けまいと一本一本大切に醸しております。
県下では唯一、全量槽搾りという手法にこだわった酒蔵です。
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訪問日 : 平成23年10月8日
寒鰤で有名な氷見、海岸線すぐそばにある高澤酒造さんを訪問いたしました。
郷土の味に合うお酒を
今回案内していただきました、七代目蔵元 杜氏 高澤龍一氏。
高澤酒造さんの目指すお酒は、口当たりが軟らかくてキレが良い、そして魚料理を食べてても飲み飽きない、郷土の味に合うお酒。
氷見は新鮮な魚介類の宝庫。「魚を食べる時は、曙がほしい」と言って戴ければ本当に嬉しいです、と話してくださいました。
仕込みは12月初め ・ 一役担う「あいの風」・・・
●仕込み米
五百万石(氷見市)・山田錦(南砺市・兵庫県)・雄山錦(南砺市)・冨の香(福光)を使用されています。
●米を蒸す
蒸している途中でもう一度水を入れ、二次蒸気で更に蒸すことによって、外硬内軟(外が硬く、内が軟らかい)な米に蒸しあがるそうです。
●放冷
蔵の戸を開け放し、目前に広がる日本海からの風 「あいの風」 を利用し、蒸したお米を冷ますそうです。「曙」が美味しくなるためには、この海からの自然の恵み(あいの風)がなくてはならないのです。
「あいの風」 ・・・・・ 日本海沖から吹く北東の季節風。地元では「あえの風」とも言います。
室内から海が見える麹室(こうじむろ)
お酒の命が吹き込まれる場所、麹室に入れて頂きました。建替えられてから7年程という室内は、まだ木の香も新しい綺麗な室です。カビを直ぐに拭き取れるようにと、室内には全て“角”がありません。
高澤氏は、麹室には 何十年もの歳月によって積み重ねられていく蔵癖(室の癖)がある、それを学ぶには若いうちからの方がいいと、建替えを決意されたそうです。
そして同時に、これからの酒蔵は見てもらえる蔵ではならないと、心臓部の麹室に見学窓を設けられたそうです。室内からこの窓を覗けば、海が見えます。若き七代目蔵元の誇りと自信が伝わってくる室です。
搾酒・槽搾り(ふなしぼり)
高澤酒造さんでは、県内で唯一、昔ながらの「槽搾り」という方法を継承されています。
「槽搾り」とは、醪が入った酒袋(7キロ)を槽の中に並べ、袋の重みでじっくりと搾るという方法です。機械を船に見立て、搾る作業の頭の人を今でも「船頭さん」と呼び、搾酒の事を「船に乗る」と言うそうです。
ちなみに、袋を吊るし、重力を利用し自然と落ちてくるお酒を集めたのが、「袋吊り」 になります。
槽搾りで出来るお酒は大まかに下のように分けられます。
一、 一番最初に出てくる白く濁ったお酒 ・・・・荒走り(あらばしり)
二、 搾り始めてから数時間経ったお酒 ・・・・中取り
三、 最後の圧をかけて搾ったお酒 ・・・・責め
この方法は手間暇はかかりますが、醪が酸素に触れる時間が長い分、繊細で味が軟らかく、ダメージがないお酒が出来るそうです。
【斗瓶吊り】
搾ったお酒を斗瓶に詰め、吊って寝かせ(常温で)澱(おり)が沈んだら、
上澄みだけをとり出荷します。
利き酒
三階にある、見晴らしの良い大広間にて、利き酒をさせていただきました。
銘柄は、左から 「ひやおろし」 (常温)
「純米大吟醸・大敷網(おおしきあみ)」 (冷)
「大吟醸・鰤起こし」 (冷)
最初は、「ひやおろし」が一番酸味が少なく感じたのですが、10分程経ってもう一度「大敷網」「鰤起こし」を口に含むと、明らかに最初の一口目より酸味が少なくなり、 まろやかな味に変化していました!空気に触れると、味がまろやかになるそうです。
日本酒は生きているんだ、そして繊細なんだと実感しました。
最後に
蔵からのこの素晴らしい景色を観ながら、「地元の人はもちろん観光客の人にも、もっともっと「曙」の味を知って貰いたい!」と語られた高澤氏。
その気持ち通り、私たちにも本当に丁寧に案内して頂きました。
蔵の前には、来年10月頃 スパを併設した大型レジャーパークが出来るそうです。
是非、「曙」の味を多くの人に堪能していただきたいです!
高澤様、本当にありがとうございました。
又、訪問させていただきます。
取材写真・番外編 ニンニン!!