庄川の流域に開けた扇状地砺波平野。全国でも珍しい「散居村」の風景が広がる緑豊かな大地に若鶴酒造はあります。県内でも有数の生産量を誇る大きな蔵元です。
創業は古く文久二年(一八六二年)。以来百数十年、酒造りの精神は一貫して品質本位、選び抜いた米と麹、清澄な庄川の伏流水、連綿と続く杜氏の心と技と変わりません。この心と技は新しいマイスター達へと継承され、日々お客様に納得していただけるような美酒造りに努力を続けています。
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訪問日 : 平成23年12月17日
砺波市三郎丸にある、若鶴酒造さんを訪問いたしました。
今回応対してくださいました、
若鶴酒造株式会社 代表取締役社長 串田 茂氏
「日本酒の需要拡大の為には、従来通りのお酒を造ることはもちろん大切だが、お客様のニーズにあった商品を新しく提供していくことも造り手側の責務ではないか」とお話くださいました。
若鶴酒造さんでは、社員が「マイスター」としてお酒造りができるように育てていくという制度を実施されていて、今期で19期目になるそうです。
そのマイスターのお一人。
製造課 課長 上田 善次氏に蔵内を案内して頂きました。
大正蔵
若鶴酒造さんには、「昭和蔵」と「大正蔵」があります。
文字通りそれぞれの時代に建てられた蔵ですが、大正時代の姿そのままの蔵は、とても趣のある蔵です。
昭和蔵
昭和蔵は仕込み・貯蔵庫として現在稼動している蔵です。
仕込み最中の蔵内を案内して頂きました。
精米~蒸しまで
仕込み米は、普通米(天高く)・酒造好適米(山田錦・雄山錦)などを使用。
良いお米の条件は、心白が中心にあり多いこと。麹菌が中まで入り込みやすいからだそうです。
若鶴酒造さんでは全て自社精米で、精米作業は年内一杯続くそうです。
【積み上げられた仕込み米(全部で3千表)】
【仕込み米】
精米時間は、精米歩合40%の場合70時間~90時間。
急ぐと熱の発生により米が割れる為、じっくりと時間をかけるそうです。
精米後はお米が熱を持つので、20日間寝かすそうです。このことを「枯らし」と言うそうです。
【全自動精米機(1台で30表精米可能)】
【浸漬タンク】
蒸し機内のコンベアの上にお米をのせ、蒸気をあて40分間蒸します。
蒸し終わったお米は、放冷機で冷風をあて冷まします。
全てのお米を蒸し終わる「甑だおし」は3月20日ごろだそうです。
【放冷機】
【大吟醸以上のお酒用の蒸し機】
(この白米はダミーです。お米の粘着を防ぐ為、この上にお米を乗せて蒸すそうです。)
製麹(せいきく)~醪まで
若鶴酒造さんの製麹は、吟醸酒等用の従来の麹室と、本醸造や普通酒用の自動の機械で麹米を造られます。
この[自動製麹装置]1台の1回の麹米の生産量は、約1.5t。これを素に約5tのお酒ができるそうです。
【自動製麹装置】
(機械は2台あります)
【自動製麹装置(タンク)】
出来た麹米と酵母菌(泡なし)を培養し、醪の元となる酒母を造ります。暖気樽を入れ温度を上げ、更に発酵を促します。このタンクの中に、1億~2億個の酵母が生きているそうです。
タンク内の酒母は、まるで沸騰しているかのように、ぶくぶくと泡を出していました。また、発酵中のなんとも甘い香りが、鼻から全身に浸透していきます。
【酒母タンク】
【タンク内】
醪造り~搾りまで
出来た酒母と、蒸し米、仕込み水を混ぜ合わせ、醪造りへと移ります。日本酒になるまでには、およそ22日間かかるそうです。
仕込みは、(添)→(仲)→(留)と3段階の工程をふみ、段階を重ねるごとに、発酵が活発になり、香りも徐々に日本酒に近づいていきます。
出来上がったお酒は搾酒機へ送られ、貯蔵タンクへと流れていきます。
【仕込みタンク】
【仕込みタンク内】
【タンクごとのお酒のカルテ】
(日付・温度・アミノ酸度・アルコール度 など、状態が細かく書き込まれています)
【藪田式搾酒機】
こうして丹精込めて造られたお酒は、貯蔵熟成し、秋口に壜詰されお客様のもとへと出荷されます。また、出来立てをそのまま搾った「しぼりたて」もこの時期ならではの希少なお酒として人気があります。
最後に
自動麹装置など、生産量が多い分機械を使用されていますが、全て機械任せではなく、やはり要はマイスターさんの技と心なんだということを教えていただきました。そうして、大切に育てられた醪の元気の良さと香りに感動しました。
若鶴酒造の串田社長様、上田課長様、従業員の皆様、本当にありがとうございました!